静岡県浜松市のお客様から塩素除去が出来ていないとの知らせが来ました。
これはその時の分析表です。
先月からこの状態になったそうですが、確かにこの数値は塩素除去できていません。
7月にネオパルフェを導入して1か月目は小さな子供さんの肌もキレイになったって喜んでくださってましたから、わずか3ヶ月で破過(※1)を起こしたことになります。
ともかくスケジュールを組み直し、急いで浜北区の現場に行きました。
(※1):吸着材が飽和し入口濃度と出口濃度が同じになること
結論を先に言うと
破過が起きたのは水道水の急激な性状変化が原因だと考えられます。
簡単に説明します。
その前に、塩素除去には2つのパターンがあって、
1つは塩素を何かに反応させて別のものに変えるパターン。
それともう一つは塩素そのものを取り去るパターンが有ることを知っておいてください。
ネオパルフェは、そのもの自体を取り去る方式です。
この方式の浄水は単なる引き算なので、新たな副生成物を作らず安全です。
膜分離という最新の浄水システムや古典的な砂ろ過もこれにあたります。
何かに反応させて別のものに変える方式は家庭用の浄水器に多く使われます。
塩素を硫酸カルシウムやアスコルビン酸と反応させて次亜塩素酸を違うものに変える方法で、ホームセンターなどで買える汎用タイプです。
ビタミンシャワー、○○セラミックがろ過材の商品がこれにあたります。
アルカリイオン整水器などもカルシウム剤を入れて分解させるので、まぁ親戚みたいな感じです。
さて、本題
なぜ、こんなに早く破過を起こしたのか?
そもそも、脱塩素できていたのか?
ということですが、
ろ過装置の原水バルブを閉めると家じゅうを止水できたので別経路が無いことが確認でき配管ルートに間違いはありません。
そもそも塩素除去が出来ていたのか、についても設置後にDPD比色検査で確認したので間違いはありません。
また、設置後1か月目のお子さんの肌写真は
水道水に含まれる塩素を除くことでかゆみの軽減が認められた。(厚生労働科学研究費補助金(免疫アレルギー疾患予防・治療研究事業)総括研究報告書より抜粋)との報告を裏付けるような状態でしたから間違いはありません。
なわけで最初は塩素除去が出来ていたことに間違いはないのです。
なぜ3か月も経たないうちに活性炭が破過したか、が焦点です。
その間に何があったのか?
まず台風24号がもたらした静岡県西部を中心とした大規模な停電、浸水被害、断水事故を最初に疑いました。
浄水場にとって停電は地震・テロと並ぶ危機事象ですから水質に大きな影響を及ぼします。
しかし10月1日未明から始まる台風24号災害より先に起きていたので見当違いでした。
ところが
中部電力の停電情報を見てみますと、実は24号の前から浜松市ではたびたび停電が発生していたのです。
■7月28日(台風12号)
■8月12日(局地的豪雨)
■8月24日(台風20号)
■9月4日 (台風21号)この停電は天竜区で長期に及んでいます。
気象など自然変化による水源水質の変動への対応は簡単ではありません。浄水システムのコントロールは制御盤に組み込まれたシーケンサーの指示によるものですから、停電はトラブルのもとなのです。
緊急時は被害発生の抑制が最重点課題ですから、公衆衛生の安全性確保に残留塩素濃度を濃くしてあたります。
通常とは水質の違う水道水が届けられるわけです。
もうひとつ悪いことに、浜松市は水道局の職員が少ない。
平時は合理的で収益性が全国で1番高い浜松市は大変優れた事業体ですが、災害時には個々に大きな負荷がかかります。
あくまで想像ですが、わずかな期間に再々起きた水源水質の急激な変動や停電は浄水システムに悪影響があったと思います。
一時的ですが7月末から10月初旬までの期間に残留塩素は、濃い時が何度かあったと考えられます。
また、浜北区は浜松市の天竜川を水源とする大原浄水場と地下水を水源とする常光浄水場の水が供給される地域です。
しかし静岡県が運営する遠州広域水道からも受水していることが分かりました。
しかも45%と半分近い量が遠州広域水道から持込まれます。
前述した停電データは浜松市に限定したもので、地域を広げればもっとたくさん発生しています。
更に、別の視点から見てみますと
浜松市の給水管の総延長は4700㎞と非常に長大です。
これは浜松からシンガポールまでの距離に相当します。
塩素は給水管で運ばれる間に徐々に分解されて減っていきますから、浄水場から遠い地点では薄くて、近い地点では高いのです。
今回の現場は、遠州広域水道の於呂浄水場からたった2㎞しか離れていない場所にあるので、かなり濃いくなったと想像できます。
浜松市内に在りながら浜松市の水道ホームページには記載されていない於呂浄水場は、県のホームページに載っていました。
これが目と鼻の先にある、ただでさえ濃い塩素地域です。
こんな、タマタマが重なって起きた「早期の破過」だったと思います。
ネオパルフェの性能不良を心配しなかった、といえば嘘になります。
もしや、と不安な気持ちにもなっていました。
しかし、逆にリニアな反応をしてくれたネオパルフェの素直な性能の確かさを再確認した事案でした。
そして、いくつかの条件が揃えば今後またこのようなことが起こることが分かりました。
対応策は検討するとして、ひとまず下記3点は取り組んでいこうと思います。
① 災害など市水道が緊急対応にあたったような地域の情報を速やかに把握
② その地域にお客様が居ればヒアリングと簡易検査薬をお届けしてろ過状態の確認
③ 破過したとみられる活性炭には交換のご提案
10月19日にfacebookに上げた投稿を見て、不安になったかたもいらっしゃるかもしれません。
ご心配をおかけし申し訳ございません。
事後の検証なので仮説の域を出ませんが、ネオパルフェの活性炭の不良ではなさそうです。
本事案ではフィルターを交換し、塩素除去を確認して帰ってまいりました。
往復730㎞のロングドライブでした。
あとがき
■ネオパルフェは遊離残留塩素を活性炭に吸着させて水から塩素を奪います。
奪われた塩素は活性炭内に留まるので、いつかは限界が来ます。
そこを破過点と云います。
破過点に到達する前に交換を推奨しています。
■別の物質に反応させて塩素除去をする方法ならば破過は起こりません。
しかし副生成物が作りだされることを嫌い水処理関係者には抵抗感を持つ人が大勢います。
トリハロメタンみたいに、ず~と後になって「実は発がん物質でした」なんてことが無いともいえないしネ。■今年の台風は様々な地域に大きな爪痕を残しました。
浜松市浜北区のように断水、停電、浸水が起きた地域では、ご家庭でお使いの浄水器は機能を失っているかもしれませんヨ。
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